美大の総合型・学校推薦型選抜とは?

総合型学校推薦型選抜

美大の総合型・学校推薦型選抜とは?

一般選抜と何が違う?

美大の総合型選抜・学校推薦型選抜は一般選抜と比べて、試験の時期が早く準備するものが多いことが特徴です。
日程や試験内容は大学・科によって異なります。最新の募集要項を必ず確認しましょう。

総合型選抜

試験時期9~11月
試験内容志望理由書
作品ファイル
事前課題
小論文
実技試験
プレゼンテーション
面接など

学校推薦型選抜

試験時期11月
試験内容志望理由書
作品ファイル
事前課題
小論文
実技試験
プレゼンテーション
面接など
指定校制学校長の推薦が必要
公募制学校長の推薦は不要*
*評定平均が設けられている場合があります

一般選抜

試験時期2~3月
試験内容学科試験
実技試験

ここが見られる!
総合型・学校推薦型選抜の評価のポイント

熱意や意欲

どの大学・科でも、熱意や意欲が見られます。志望理由書や作品ファイル、面接、作品のプレゼンテーションなど様々な形でアピールします。「絵を描くことが好き」「将来も何かを作っていたい」という方は、作品制作に力を入れましょう。興味のあることを突き詰めたり、将来やりたいことに繋がるものに挑戦したり、時間をかけて作品の質も量も充実させましょう。

志望校に合っているか

志望する大学・科に合っているかが見られます。例えばグラフィックデザインの分野を志望し将来イラストレーターになりたいという方の場合、作品ファイルに普段描いているイラスト多数掲載すると思います。しかしそのグラフィックデザイン学科ではイラストの授業はないという場合もあり、残念ながら志望校と将来のやりたいことが合っていないと判断されてしまいます。

アドミッションポリシーと自分の状況を照らし合わせること

志望校についてよく調べましょう。例えば浪人生は現役生より準備期間が長いことからレベルの高いものを求められる傾向があります。通信制の学校に通っている生徒さんは大学生活でしっかり学校に通えるかという点など見落としがちなポイントです。一般選抜を念頭に置き、勉強は疎かにせず取り組みましょう

志望理由書とは?

なぜその大学・科を志望するのか、意欲を文章でアピールします。
その大学・科でやりたいことを中心に、将来やりたいこと、これまでの経験などをまとめましょう。

その大学・科でやりたいこと

その大学・科では何を学びたいですか?どの授業に興味がありますか?授業以外ではどんな活動をしたいですか?これらは面接でもよく聞かれます。これらに答えるために、まずは志望校についてよく調べましょう。

将来やりたいこと

将来はどんな活動をしたいですか?デザイナーや作家などの肩書ではなく、どんなものを作り、どんなことを伝えたいか、どのように人や社会と関わりたいかを考えましょう。

これまでの経験

高校で頑張ったことは何ですか?そこで何を学びましたか?その経験をどう生かしますか?美術に興味をもったきっかけや、オープンキャンパスの感想などを書くこともあります。

ポイント

具体的に、自分の考えを書きましょう。そしてその内容が、志望校に合っているかを客観的にとらえましょう。志望理由書は「ですます」小論文は「である」が基準となります。

作品ファイルの作り方

作品や活動の資料をファイルにまとめ、意欲をアピールします。ポートフォリオとも呼ばれます。

  • 今回使用したアプリ:無料お絵描きアプリ「メディバンペイント」。
  • 今回の動画:デザイン系向けのポートフォリオを想定して講師が作成。
  • キャンバス設定/自分が作りたいキャンバス設定ができるソフトを選ぶのも大事。
  • 台割シートのエスキースに沿って大まかに画像や文章の位置をレイアウト/文章もこの段階では適当でOK。
  • 文章や画像の修正/テーマやコンセプト、課題内容、学習課題なのか自主制作なのか等、作品情報をしっかり載せる。
    POINT:アピールする箇所を作ってメリハリをつける。
  • レイアウトの調整/レイアウトが決まったら画像や文章を差し替えて使い回すことが多くなるので丁寧に。
    POINT:まず1枚レイアウトができたら実際に印刷して、講師のチェックを貰う。
  • 完成/ポートフォリオにのせる作品は完成度が大切。そして、頑張って描いた作品がよく見えるように。今回は1ページ作るのにかかった時間は30分程度。レイアウト、内容によってはそれ以上かかることももちろんあるので、早め早めに取りかかってくこと。

掲載する作品

デッサンや専門課題、自主制作を掲載します。完成度の高い作品、内容の濃い作品を掲載しましょう。完成度だけではなく、何かのきっかけになった作品、学びの多かった作品もよいでしょう。

また、上手に描けた作品だけではなく、自分が初めて描いたデッサンの作品なども掲載する効果があります。例えば自分の上達の経過を伝えるために初めて描いたデッサンから現在に至るまでの上達が分かるように見せることができれば、今後の期待値としてアピールすることができるでしょう。

レイアウト

作品の画像のほか、作品の情報、コメント、ページ数を配置します。作品の情報は、タイトル、サイズ、技法や素材、日付、制作時間などを記載します。体育祭の看板など複数人で制作した場合、自分が何を担当したかも記載しましょう。

表紙は積極的に作りましょう。氏名や受験する科などの情報のほか、代表作を配置したり、飾りをつけたりします。レイアウトは縦位置が多いですが、絵画系は作品を大きく見せてほしいと言われるため横位置で作る場合もあります。
大事なのは「誰に見せるか」です。

機材

パソコンやタブレットで作る学生が多いです。Word、Googleドキュメント、Pages、アイビスペイントなどを使っています。

手作りでも大丈夫です。作品画像を印刷して台紙に貼り、情報を書き添えます。様々な紙や画材を使って個性を出すことができます。

早めにレイアウトや概要を決め、オープンキャンパスで担当の教授に相談してみることもお勧めです。ただし教授からもらったアドバイスは必ず制作に反映させましょう。先生たちはアドバイスしたことをしっかり覚えています。

印刷

印刷すると画像の色や文字の大きさなど印象が変わります。試し印刷をして確認しましょう。

家庭用インクジェットプリンター:試し印刷ができて、提出ぎりぎりまで修正できます。印刷がやや不鮮明なので、設定や紙を工夫しましょう。インクと紙は多めに準備しておきましょう。

コンビニの複合機:印刷が比較的鮮明です。お店によって若干差があるので、通いやすいところで試しておきましょう。紙が選べないことが難点です。

印刷会社に発注:仕上がりがきれいです。届くまでに時間がかかるので、思い通りに印刷できないと大変です。

家庭用インクジェットプリンターで印刷する場合、写真用のマット紙やインクジェット紙がおすすめです。

写真用紙(光沢):発色は良いです。光を反射するため見づらく感じることがあります。

写真用紙(絹目調):発色が良く光沢が抑えられています。上質な仕上がりですが高価です。

フォトマット紙:光沢がなく、写真用紙より発色はやや劣りますが安価です。

コピー用紙:発色が鈍くインクが滲むことがあります。レイアウトの確認で使用します。

ファイル

30穴のバインダー:作りたいページ数によってリフィルの数を調整できます。リフィルは透明度が高く張りのあるものを選びましょう。

クリアファイル:ポケットの数が決まっているのでページ数の調整が必要です。金具がない分すっきり見えます。どちらのファイルも、外側が透明のものだと表紙を見せることができます。背表紙を入れる部分があれば作りましょう。バーコードのシールなどは剥がしましょう。

製本:ステープラーや糸で綴じる製本のほか、既製のファイルにカバーをつけるなどがあります。壊れないもの、周りを汚さないもので作りましょう。

各大学のフォーマット

東京造形大学(総合型選抜)

A4ファイル1冊、30~60ページ程度、区分(A)(B)(C)2つ以上が主な条件です。
区分(A)基礎的能力を示す資料は、デッサン、クロッキー、平面構成、立体構成、ドローイング、油彩画、水彩画などです。
区分(B)専門的能力を示す資料は、自主的にテーマや課題を掲げた作品や、継続して取り組んでいる創作活動や創作物です。
区分(C)その他の活動に関する実績を示す資料は、学校行事、部活、地域での創作活動の資料や、資格の認定証や展覧会の賞状などです。

女子美術大学(総合型選抜)

出願と2次審査でそれぞれ必要です。出願では「自己アピール資料」A4 1~5枚を提出します。2次審査では専攻・領域により異なります。洋画ではA4ファイル1冊、作品10~30枚程度を持参します。

その他

日本大学芸術学部(総合型選抜)ではA4以上、桑沢デザイン研究所総合デザイン科(昼間部)(自己推薦入試)ではA4ファイル1冊とされています。特に指定がない場合はA4ファイル1冊 30ページ程度を目安にしましょう。

ポートフォリオの紹介

東京造形大学
グラフィックデザイン専攻領域1

完成度の高い作品とポートフォリオです。レイアウトは明快ながら単調にならないように工夫がされています。

東京造形大学
グラフィックデザイン専攻領域2

製本の例です。ポートフォリオ作成要領では「ファイル」とありますが、専攻領域説明会に参加して製本してもよいと確認したとのこと。

日本大学芸術学部

グラフィックデザイン専攻領域2

明るい印象を与える好感度の高い作品ファイルです。作者の個性も見せつつもリサーチ力の高さで行動力を示した作品ファイルです。

多摩美術大学
油画専攻

作者の個性と圧倒的な作品数で作家としての可能性を提示した見応えのある作品ファイルです。掲載はほんのごく一部です。

女子美術大学
メディア表現領域

得意なイラストレーションを上手にまとめ、将来やりたいことを上手に伝えた作品ファイルです。

 
様々な作品ファイルを見ておこう

ネットで調べるだけでなく、本屋に足を運んで自分の好きな本を見つけたり、実際の印刷物に触れたりしてみましょう。本には紙質、見せ方、デザイナーのこだわりが詰まっています。印刷物の存在感を肌で感じてみることが大切です。

大きな本屋だと美術やデザインの本も扱っていることが多いです。代官山のTサイトや表参道の青山ブックセンター、渋谷のユトレヒトやナディッフなどは美術やデザインの本が充実していて、企画展をやっていることもあります。

面接とプレゼンテーションのコツ

面接では志望理由を教授に直接アピールします。
提出した志望理由書や作品ファイルなどをもとに質疑応答があります。
すらすら話すことや正しい敬語を使うことはあまり重要ではなく、伝えようとする姿勢が大切です。
プレゼンテーションでは、その作品で伝えたいことや、どのようにして作ったかを伝えます。

面接が告知なく集団面接になることも
女子美洋画はプログラムで描いたものの講評会で他の受験生の作品にコメント
女子美のプログラムは作品の完成度ではなく、制作中の姿勢やコミュニケーションを評価
造形は教授との距離が2m。声は大きく、作品も大きく!ポスターはA1、プレゼンボードはB2、油彩はF30~50号?
立体作品は触って見られることもあるので壊れないように作ること
好きな作家やデザイナー よく聞かれる snsなどで注目している人の他、その業界で有名な人を調べ美術を学ぶ意欲を表しましょう

オープンキャンパスへ行こう!

オープンキャンパスだからこそ見られるもの、体験できること
①オープンキャンパスでは授業見学や学生作品を見ることが出来ます。どんな授業でどんな学びが待っているのか。大学生になった自分を想像してみましょう。

②学生さんに直接話を聞くこともできる貴重な機会になります。志望理由書や面接で役立つ情報や経験談を聞いてみましょう。

③合格者作品やポートフォリオを見ることも忘れてはいけません。特に作品ファイルは大学・科のパンフレットやWebサイトでは非公開の場合が多いので現地でしっかり見てきましょう。

④チャンスがあれば行きたい専攻の教授と直接話してみましょう。
作品ファイルや実技作品を見てもらうことが出来ます。教授からのアドバイスをその後の制作に生かしましょう。アドバイスした教授は作品をしっかり覚えてくれていますので、アドバイスをもらったらしっかり修正をしておきましょう。
以上のことをまとめながら志望理由に「その大学・科で何をしたいか?」を具体的に考えてみましょう。どの授業に興味があるか、学生がどんな作品を作っているか、大学・科のパンフレットやWebサイトだけでは想像できない体験がオープンキャンパスで得られるはずです。