女子美術大学 2023年4月共創デザイン学科スタート

2023年4月
共創デザイン学科スタート

女子美術大学
共創デザイン学科

学科長 松本 博子

トーリン美術予備校

学長 瀬尾 治
学長補佐 佐々木 庸浩

杉並キャンパスに設置予定*の
新学科の教育内容とは

共創デザイン学科は、女子美が創立以来120年以上に渡って培ってきた「デザイン教育」・「教養教員(一般・芸術)」を基盤とした上で、他の人たちと協働し、商品やサービスを生み出していく「共創教育」、ライフイベントを乗り越えて自分の未来を切り開くための「ライフマネジメント教育」、それらを応用して社会で生かしていくための「産学連携による実学教育」、これらを3つの柱とした教育を行います。その特徴的な教育を通して、学生一人ひとりが「共創型リーダーシップ」を持った人材の育成を目指します。

*:2022年2月時の内容


共創デザイン学科は「共創教育」・「ライフマネジメント教育」・「産学連携による実学教育」の3つの柱とした教育を目指す、とお伺いしました。まず「ライフマネジメント教育」を掲げられていることは、女子美術大学らしい特色だと思いますがいかがでしょうか。

一般的に”教育”というと「知識」や「スキル」を指すことが多いと思いますが、女子学生にとって『心の教育』が重要だと考えています。「美術・デザインの分野で、リーダーシップを持って活躍できる女性の育成」を目指していますが、女性が社会で活躍する際、結婚や出産などのさまざまライフイベントでの困難に直面することがあります。その時に「私はもうちょっと出来る」と思って、前を向いてその困難を乗り越えていく心が必要です。その心を創るために、共創デザイン学科では学生と年齢が近く、今まさに社会で活躍している方が講師となり、授業を通して社会の最先端の考え方・働き方を学生たちに伝えていく。その教育を共創デザイン学科の教育の柱のひとつと考えいます。

次に「共創教育」についてお聞かせください。

共創教育はクリエイティブだけでなく、ビジネスとテクノロジーの各分野を融合させた教育と考えています。ビジネス・テクノロジーという分野は、美大の授業としてイメージがわかないかもしれませんが、今の社会の現場では、クリエイティブの1分野・1スキルだけでは新しい事業を生み出したり、既成の考え方では解決できない課題が多く、各分野の人たちと意思疎通できること、相乗効果を生み出すこと、が求められています。共創デザイン学科で学ぶ学生には、各分野の人たちとお互いに理解し合うことをベーシックに身に付けてもらうことも目的とした教育を行う予定です。また現時点ではクリエイティブ・ビジネス・テクノロジーの分野としていますが、時代の流れによって違う分野の融合が必要となった場合は、授業に取り入れていく予定です。


芸術学部 共創デザイン学科(仮称)リーフレットより トーリン美術予備校作成
共創デザイン学科の具体的な授業を詳しくお聞かせください。

共創デザイン学科では、一般の方にも馴染みがあるグラフィック・プロダクトといった、”目に見えるデザイン”はデザインの基礎スキルとして授業で行います。それに加えて、ブランディング・ビジネス・サービスといった”目に見えないデザイン”も授業で扱います。”目に見えないデザイン”はまだまだ馴染みがない人も多いと思いますが、今後社会では重要にっ
てきます。例えば、ブランディングデザインでは、企業や商品が発するイメージを企画構想し、固め、明確に伝え、ファン(顧客)を獲得するという役割があります。ブランディングデザインがないままだと、様々な解釈が出てしまい、企業や商品のイメージが固まらない・伝わらないということになります。

“目に見えないデザイン”部分は企画構想となるもの、そこを固め、明確に示すことが出来る人がいれば、チームで仕事をする時にも方向性・考えがまとまりやすいと思います。

まさにその通りです。デザインの基礎スキルで自ら創り出す力は兼ね備えつつ、企画構想・周囲を巻き込む力も身につけている人材を育成するための授業を行っていく予定です。

“目に見えないデザイン” を学ぶことが今後の社会では重要になってくる、と松本氏。
写真右より松本博子教授、瀬尾治、佐々木庸浩

ライフマネジメント教育・共創教育を応用しての「産学連携による実学教育」とありますが、具体的にお聞かせいただけますか。

現在多くの大学で企業との産学連携は行われていますが、そのほとんどは学部3年生以上が対象だと思います。一方で共創デザイン学科では1年生から産学連携を授業として、取り組んでもらいます。理由として、今の高校生は授業や部活動を通して、企画提案する力・物事をまとめる力がある程度育っていると感じています。高校時代に身に付けたものをさらに伸ばすためには、1年生から取組むことが有効です。

確かに高校3年間で様々な経験をしたにも関わらず、大学1・2年生の課題が基礎しか学べないとなるともったいないと思います。

基礎はもちろん大切ですが、産学連携を通じた応用も経験することで、学生の力を伸ばしていくことができるので、そういった循環を1年生から取り入れる予定です。学ぶことが多いので大変だとは思いますが、学生たちはやりがいを持って取り組んでもらえると思います。

共創デザイン学科の学びの内容を聞いていると、好奇心があって積極的な高校生に魅力的だと思いますがいかがでしょうか。

好奇心を持ってガッツのある高校生にはぜひ来てほしいと思っています。一方でまだ自分に自信が持てずに積極的に行動できなかったり、やりたいことにまだ気が付いていない高校生でも、大学に入ってから産学連携を経験することで、急にやる気のスイッチが入ることもあると思います。教員側は「どういう風にしたこの学生は成長するのだろう」と考えながら一人ひとりに指導するので少しでも共創デザイン学科に興味があったら来てほしいと思います。

共創デザイン学科の教育の3つの柱を聞かせていただき、今までとは違う「新しい授業」が行われる印象を持ちました。

現在、杉並キャンパスに共創デザイン学科の新校舎を建設中ですが、授業が行われる場所は教室として区分けせず、オープンスペースにする予定です。様々な授業が同じフロアで同時に進行、隣の授業の教員や学生の声も聞こえるような状況ですが、履修している授業に捉われない交流や融合が可能です。教育現場としては実験的な部分はありますが、教員も今まさに社会の第一線で活躍しているので、新しいことをどんどん取り入れて、面白い授業が出来ると思います。

今企業で、コミュニケーションを図るために、オフィス内でオープンスペースを採用している企業もありますが、それに近いイメージだと思いました。

女子美で学生と接していると、何が成長のきっかけになるかが分からない部分があって、丁寧に教えたことよりもむしろ雑談の一言で、その学生が変わることもあります。きっかけを様々な形で作るという意味で、授業を行う空間にも特徴を持たせる予定ですので、校舎が完成したらぜひ高校生の方・保護者の方にもご覧いただきたいです。

少し話題を変えて、共創デザイン学科の4年間学んだ学生の卒業後の進路はどのような想定されておりますでしょうか。

学生には、4年間で既成概念に捉われない創造力を身に付けてもらい、卒業後は企業の総合職として就職し、ビジネスの中核で創造力を発揮してもらいたいと考えています。クリエイティブがどのような業界でも活かせる時代になってきています。デザインの専門職に留まらず、企業において新たな領域を切り拓き、将来的に事業経営を推進できる人材を育成したいと考えています。

産学連携の授業の様子
共創デザイン学科では、数多くのプロジェクトに合わせた活動を行うことができる自由度の高い専用のスタジオを準備予定。教員と学生、企業と学生、学生同士など、さまざまな交流や融合が生まれやすい、自由度の高い空間で授業が行われる予定。

卒業後の進路は、高校生はもちろん、保護者・高校の先生方も気になる事項かと思います。

共創デザイン学科では4年間で進路・キャリアも広がる教育を行う予定ですので、安心して進学を勧めて頂ければと思います。また、現在「デザイン経営宣言」や「STEAM教育」などを通じて、美術・デザインの分野が社会で必要とされていることが少しずつ一般の方にも認知されてきましたが、高校でも進路指導の先生など、美術以外の先生方にもさらに知っていただき、高校生の進路指導の現場で、お伝え頂きたいと考えています。

また共創デザイン学科に興味をもつ高校生にとっては入試方式・科目も気になると思いますが、今決まっている範囲で教えていただけますでしょうか。

絵が描けることは必須ではなく、発想力・伝える力を重視した入試を行う予定です。試験内容も試験時間中に楽しめるような内容を考えていきたいです。いずれにしても文系・理系全ての方が受験可能な入試方式を検討していますので、ぜひチャレンジしてもらいたいと思います。

同キャンパス内では芸術学部アート・デザイン表現学科/共創デザイン学科ならびに、短期大学部の
学生と、付属中学・高校の生徒が学ぶ。

新学科を開設する杉並キャンパスは、新宿副都心から電車で10分以内というアクセスの良さが魅力。

松本博子(まつもと ひろこ)

女子美術大学 副学長/研究所長/芸術学部デザイン・工芸学科プロダクトデザイン専攻 教授/ 2023年4月共創デザイン学科(仮称)学科長就任予定

女子美術大学芸術学部産業デザイン科卒業後、東芝デザインセンターにてデザイナー、デザインディレクターとして家電、AV 機器、ヘルスケア、新規事業など多くの商品・仕組みのデザインを手がけ、グッドデザイン賞金賞、IF・red dot design award 金賞など、国内外の受賞歴多数。2012 年より女子美術大学デザイン・工芸学科プロダクトデザイン専攻教授。プロダクトデザイン専攻では、企業とのコラボレーションをカリキュラムに取り込み、実践的な授業を精力的に展開。授業以外でもエコデザインや地域・企業との産官学連携プロジェクトに多数取り組み、「こと・もの」のデザインで学生の課題解決力を育成。

インタビューは2022年2月14日、女子美術大学杉並キャンパスにて。新型コロナウイルス感染対策を十分にとった上で実施。