女子美術大学が目指す教育とは

創立125周年に向けて

女子美術大学が
目指す教育とは

女子美術大学
女子美術大学短期大学部

学長 小倉 文子

トーリン美術予備校

学長 瀬尾 治
学長補佐 佐々木 庸浩

女子美術大学では、2023年4月芸術学部に「共創デザイン学科」を新設します。共に新しい価値を創り出す共創型リーダーを育成する本学科は「デザイン」を主軸に「ビジネス」「テクノロジー」を横断的に学び、1年次より産官学連携による実学を取り入れ、多様な人々と共創する力を身につけます。

2024年にはアート・デザイン表現学科に新領域「スペース表現領域」が加わります。そして、2025年に迎える創立125周年の節目に向けてグローバル教育の推進や基礎教養科目の更なる充実、両キャンパスの施設設備の拡充など、教育研究活動を推進してまいります。

写真:共創デザイン学科の新校舎は、本学における多様な領域の人々と共に新しい価値を創造する、「共創型リーダー」を目指す本学科の象徴となる建物です。


昨年は 2023年4月新設の共創デザイン学科の教育内容について松本学科長に「共創教育」「ライフマネジメント教育」「産学連携による実学教育」の 3つを柱とした教育についてお話を伺いました。その共創デザイン学科がいよいよスタート。新しい校舎も完成したと伺いました。

2023年4月の授業開始にあわせ、新校舎が完成しました。多様な領域の人々と新しい価値を創造する「共創型リーダー」を育成するための場として、一般的な大学の教室ではなく、隣の授業の教員や学生の声も聞こえるようなオープンスペースで、さまざまな交流や融合が可能な設計となっています。

2024年4月からは、既存の芸術学部3学科(美術学科/デザイン・工芸学科/アート・デザイン表現学科)を再編、その教育内容にあわせて杉並・相模原両方のキャンパス整備を進めています。

2024年4月からの芸術学部 3学科の再編はどのようなものでしょうか。

杉並キャンパスのアート・デザイン表現学科では、新領域「スペース表現領域」が加わります。またメディア表現領域、ヒーリング表現領域、ファッション表現領域、スペース表現領域、クリエイティブ・プロデュース表現領域の5領域体制となります。各領域が響き合いながら、社会に開かれたアートとデザインを様々に融合した教育を展開していきます。

また相模原キャンパスの美術学科では芸術文化専攻が国際芸術文化専攻に名称変更。芸術文化と多様性をカリキュラム編成の理念とし、美術学科内の洋画専攻・日本画専攻・立体アート専攻・美術教育専攻と連携し、実技と理論の両輪による横断型授業を展開します。同じく相模原キャンパスのデザイン・工芸学科では、ヴィジュアルデザイン、プロダクトデザイン、環境デザインおよび工芸(染・織・刺繍・陶・ガラス)の各専攻を跨いだ横断的な授業の充実を目指していきます。

女子美がすごく大きく変わっていく、という印象を受けました。

時代にあわせて教育内容・施設整備などは変化しています。一方で、1900年創立時の女子美の建学の精神、創立者が示した教育方針は今も受け継がれています。

例えば、女子美では現在数多くの企業や自治体との「産官学連携プロジェクト」に取り組んでいますが、女子美が創立して間もない120年前も既に、社会貢献・地域貢献につながっていく教育、医療・福祉・化学など分野を超えた連携教育を積極的に取り入れていたことが歴史資料として残っています。

時代によって社会状況やコンピュータのような道具は変化しますが、「アートやデザインの力を使って社会に貢献する人材を育成する」という女子美の教育は変わっていないと思います。

また今回の再編にあたっては「女性のための美大」「アジア・世界を見据えた美大」「教育力の高い美大」の3つを掲げ、その実現に向けてカリキュラムを組んでいます。

全学科に共通する例を1つ挙げると「アジア・世界を見据えた美大」を実現するために、アーティスト・イン・レジデンスの活動や基礎教養科目の語学教育が充実したカリキュラムに変更し、授業を行う予定です。

「グローバル」という視点で留学や国際交流にも力を入れておられる印象を持っています。

女子美は“縦のつながり・横のつながり・外とのつながり”を大切にしています。学科や学年を問わず意欲があれば、参加可能な海外研修や海外サマースクール・スプリングスクールを行っており、現地で美術館や工房の見学、デザイン研修などを受けることができます。

2022年8月に開催したイタリアのミラノ・ベネチア研修では、ヨーロッパで作家・デザイナーとして活躍するさまざまな年代の卒業生と、参加学生との交流会が行われました。

スクール・オブ・ヴィジュアル・アーツ(米国・ニューヨーク)での海外サマー・スクールの様子

女子美にはどのような役割が求められているのか。その問いを社会とともに考えるプラットフォームとして、女子美クリエイティブ・ラボラトリー、通称「女子美ラボ」を創設。2022年度はパイロット事業として杉並キャンパス近くに新しくスペースを設け、様々な企画を行っている。

学生たちは「女子美の卒業生は海外で活躍している」ということを知っているとは思いますが、リアリティを持って話を聞くことができる機会ですね。

その通りです。女子美には卒業生を対象として国際的なアーティスト・研究者の育成を目的とした女子美パリ賞・ミラノ賞・ベルリン賞の奨励制度があり、受賞者は各都市に派遣、それをきっかけに海外を拠点に活躍する卒業生が多くいます。その卒業生と在学生が交流、つながることで、学生たちはロールモデルを身近に感じることができ、とても刺激になります。

女子美は多くの卒業生の方が社会で活躍されていますが、今後は共創デザイン学科をはじめとして新しい教育・環境で学んだ学生たちが将来どのように活躍していくのか期待しています。共創デザイン学科の「共創型リーダー」というキーワードもとても興味深いです。

女子美での学びの中で専門性を身に付けることはもちろんですが、学生たち自身が「考える力」「生きる力」を鍛え、身に付けてもらうかが重要だと考えています。またリーダーシップについても女子美では、「互いの価値観を認め合う関係づくり、共感する、協働する環境を整えること」「他者を認め、他者に振り回されず、暗黙のルールに流されず、自分が正しいと思う道を進む」という、他大学にはない、女子美の環境でこそ育むことができる力だと感じます。

また、教育研究活動の特徴的な取り組みとして「女子美クリエイティブ・ラボラトリー」を創設したと伺いました。

女子美はこれまでも女性が美術教育を受ける機会を造成し、美術による女性の自己実現を支援してきました。そして今、これほど多様性が重視される社会が到来した時代に、女子美にはどのような役割が求められているのか。その問いを社会とともに考えるプラットフォームとして、女子美クリエイティブ・ラボラトリー、通称「女子美ラボ」を創設しました

2023年度から本格始動する女子美ラボですが、2022年度はパイロット事業として杉並キャンパス近くに新しくスペースを設け、様々な企画を開催、社会とともに継続的に議論し考え、その議論や模索し続ける姿を発信していきます。企画の様子やインタビュー動画は、随時女子美ラボサイトで公開いたします。

最後に女子美に興味を持つ高校生・保護者の方・企業の方にメッセージをお願いします。

まずは2023年4月からスタートする共創デザイン学科に少しでも興味を持った方は、オープンキャンパスなどの機会に、女子美に来て新校舎をご覧ください。またオープンキャンパスのなかで、共創デザイン学科主催で高校生向けのワークショップが開催予定ですので、そちらにも参加していただければと思います。昨年開催したワークショップでは参加した高校生はもちろん、見学された保護者の方からも「興味深かった」との声もいただきました。オープンキャンパスに受験生だけでなく保護者の方も付添でお越しいただき、是非共創デザイン学科の教育内容の理解を深めていただければと思います。

2022年に行われた共創デザイン学科のワークショップの様子『デザイン&プログラミングで友達ロボット作ろう』ワークショップ
講師:株式会社CuboRex 羽田成宏・中村勇太

『自分の感性を呼び起こそう!~共創デザインワークショップ~』
講師:一般社団法人グラフィックファシリテーション協会
株式会社しごと総合研究所 山田夏子・伊澤佑美

また2024年4月から芸術学部3学科が再編されますが、創造性に溢れ、「考える力」「生きる力」を備えた人材育成をきめ細やかな教育体制で行っていく予定です。まだ志望分野で悩んでいる高校生もいると思いますが、気になった学科・専攻・領域について調べたり、オープンキャンパス・女子美祭・卒業制作展の機会に直接みて、女子美の校風を感じていただければと思います。

インタビューは2023年2月9日、女子美術大学杉並キャンパスにて。新型コロナウイルス感染対策を十分にとった上で実施。